ある古いお客様からお電話を頂きました。
「20年くらい前に、お宅から旋盤を買った者ですが、長い間使い続けてきたので、全体に相当ガタがきています。この際、思い切って新しい旋盤に買い替えたいと思っています。」との有難いお話しでした。
「ところで、前に購入した時には、特注で、XXX部分を改造してもらったので、今回購入する旋盤も同じように改造して欲しいのですが・・・」とのご要望。

はて、そんなことありましたっけ?全く思い出せません。当時、その型式の旋盤を担当していたベテラン社員も首を傾げるばかりです。
もしかしたら何らかの記録が残っているかもしれないと思い、当時の古い資料をひっくり返してみました。すると、ありました。このお客様との当時のやり取りや改造内容についての記録がきちんとファイルされていたのです。それによれば、作業内容自体は比較的単純であり、今回も十分に対応可能と判断しました。

その記録を見せられた件の社員は、それでも思い出せない様子でした。結局、今回の作業も、同じ担当者が行いました。作業自体は、なにも問題が起きず、無事終了。
作業をさせれば、当時のことを多少は思い出すかと期待していたのですが、やっぱり思い出せない様子。
「この記録から、間違いなく自分がやった作業だとは思いますが、やはり記憶にございません。」というお答え。本当に記憶はあてにならないものだと痛感しています。

世間では今、証人喚問だとか百条委員会だとかの話題で持ちきりです。40年前のロッキード事件の証人喚問で、証人が「記憶にございません」を連発し、流行語になりました。この言葉は、嘘をつく時の常套句のように思われているようですが、私たちの場合は、この案件については本当に記憶にございません。
でも、記録を保管しておいたおかげで、お客様に迷惑をおかけせずに済みました。