FL551V旋盤には2つの顔があります。まず、衝撃的な事実として、輸入された段階でこれほど品質の悪い機械はないということです。塗装はひどく、ボディは傷だらけ。梱包用の箱も劣悪。これが新品なのか、中古品でも、もっとマシな機械があるのではないか、と言いたくなるくらいの惨憺たる状態で入荷されます。この機種は取扱いを開始して3年以上経ちますが、年々品質が悪くなり、最近、入荷したロットなどは、ベッドの裏側の処理が悪く、機能上の問題も深刻なレベルでした。このため、機械全体を分解し、ベッドを丸裸にした上で、フライス盤にかけて再加工せざるを得なくなりました。大きな決断でした。
一方、「素材」としてのFL551Vは非常に魅力的です。件のベッドにしても、修正加工した裏側はともかく、摺動面は高周波焼き入れの上、精密研磨されています。主軸の貫通穴が26mmというのもうれしい。ですから、しかるべき処置を講じれば、この機械はものすごく光るのです。
いずれにせよ、この機械の整備時間は当初の想定をはるかに超えるものになりました。このような事態を受けて、やむを得ずこの機種の作業内容、工程を根底から見直しました。それに加えて、中国の人件費高騰による度重なる値上げ(品質が悪くなっているのに、値上げとは全く納得がいきませんが・・・)と、最近の急激な円安というダブルパンチにより、誠に遺憾ながら、この機種については大幅な値上げを余儀なくされました。
整備により、輸入した時とは見違えるほどの品質になりましたが、元が悪すぎるのでどうしても外観的には完全なAタイプにはなりません。私たちの目からみれば、小さな色ムラなどが残り、やや難ありです。だから依然としてMSタイプのままですが、機能的にはほぼAタイプといってもいいでしょう。
いま出荷しているFL551Vは、少なくともメカ部分の品質については規定通りのレベルに仕上がり、実用上は全く問題のない機械に生まれ変わりました。限りなくAタイプに近いMSタイプといえるでしょう。