XYテーブルの調整は決して楽な仕事ではありませんが、工場としては絶対妥協出来ない程ひどい機械が出てくれば、歯を食いしばってキサゲをかけるしかありません。手間はかかりますが、この種の作業を何台か経験するうちに、幸か不幸かすっかり慣れて、作業も早くなりました。こうして、このロットの機械は自分たちなりに満足の行くレベルに再調整し、無事お客様にお納めすることが出来ました。なんとかやり遂げたという満足感でいっぱいになりました。これで、一段落、ほっと一息です。
数日後、新しいロットのFM80Eが工場に入荷しました。工程上、入荷したすべての機械をその場で確認することは出来ませんので、通常はまず、数台をサンプリングして、開梱・チェックしています。今回のロットについては、2台だけ開梱して確認作業を実施しました。
誤解のないように申し添えますと、この確認作業はいわゆる出荷前検査ではなく、工場での受け入れ検査です。お客様に出荷する前の開梱・検査および調整作業は、すべての機械が対象となります。
2台を作業場の中央に並べて、まず外観のチェックです。輸送途上での破損はないか、使用部品に変更がないか(実は輸入機は部品の変更が事前の通告なしに、頻繁に行われるため、悩みの種になっています)、欠品がないかなどを確認します。これが終わると、日頃の作業から気になるところを見ていきます。問題のXYテーブルの動きは、まだ若干問題があるものの、前のロットに比べずっとよくなっていました。「うん、これならあまり苦労せずに出荷前検査が出来る」と内心喜びました。他のスタッフにもみてもらい、まあ大きな問題はないだろうということになりました。ところが、Z軸(主軸の上下)のハンドルをまわしてみて唖然としてしまいました。なんと、ヘッドの上下の動きが、コラム(柱)の下の部分では極めてスムーズなのに、上のほうでは固くて動きが非常に悪いのです。2台とも同じ状態です。「XYがよくなったと思ったら、今度はZか。まるでモグラ叩きだね。」 Z軸の動きの調整には、一旦ヘッドを取り外す必要があり、XYテーブルの調整より厄介です。こうして今、以前にも増して、FM80Eの出荷前検査で悪戦苦闘させられています。