まず、下の画像をご覧下さい。

これは卓上旋盤の出荷前検査中に、往復台と呼ばれる、刃物台を載せるベースを正面から撮影したものです。この部分は、V字型になったアリ形という案内面を有しており、上下の滑り面を嵌め合わせた構造になっています。
アリ形の場合、そのままの状態ではガタが出るので、ジブを入れてガタを調整出来るようになっています。

先日、検査表に従って、いつもの手順で旋盤を整備していたところ、クロススライド部分の異変に気付きました。押しネジをいくら締め込んでも、ジブ調整が出来ないのです。ジブ調整が不完全な場合には、分解して、適宜キサゲをかけて部品の手直しするのですが、今回は、いつもの感触とは明らかに違っていました。

よく見ると、なんとクロススライド(上部)のアリ溝と往復台(下)のアリの角度が違っているではありませんか! 
左右の画像を比較してご覧頂ければ、角度の違いがお分かりになると思います。右が正常、左が異常です。

こうなると、キサゲで直せるレベルではありません。アリの角度をフライス盤で加工し直すことも可能ですが、同時に、これにピッタリ合う厚みのジブも新たに作らなければなりません。ちょっと非現実的ですね。

聞くところによれば、卓上の工作機械を扱っている業者さんの中には、機械の調整をユーザサイドで実施するのを条件に、低価格で販売しているところがあるようですが、アリの角度が違っていたら完全にお手上げです。

私たちの工場では、何らかの難点がある機械を「アウトレット品」として販売することがあります。しかしながら、アリの角度が不良の旋盤で作業をすれば、必ず支障がでますので、その部分を解決しない限り、アウトレットといえども販売出来ません。

結局、往復台部分の部品を丸ごと交換して、ジブを再調整し、無事検査を終えました。