前回の「キサゲに対する誤解」の中で、海外から輸入される機械に、きれいにキサゲ模様が施されているのに、全く精度が出ていない機種がある、というエピソードをご紹介しました。これに似た話で、弊社がたびたび遭遇するのが、海外メーカーによる“インチキ精度検査表”です。弊社取り扱いの一部の外国製機械は、機械本体と一緒に署名入りの精度検査表が添付されてきます。そこには、極めてよい数字が並んでおり、項目によっては1000分の1ミリ程度の誤差しかないようにかかれています。そこに、作業責任者の名前までサインされているわけですから、何も知らない第三者がみれば、その数字を鵜呑みにしてしまうでしょう。
こうした機械を、実際に札幌工場で検査してみると、全く違う結果がでて驚かされます。1000分の1の誤差どころか、実際は10分の1ミリ(職人用語ではコンマ1といいます)単位で狂っていたりします。このような実態を外国の製造元に連絡すると「こちらで測ったときには確かに1000分の1だった」とか「お前たち(札幌工場)の測り方が悪い」さてまた「海上輸送途上で精度が狂ったに違いない」などと反論されてしまいます。確かに、精度検査にはテクニックが必要で、検査に不慣れな素人が装着したテストバーで測定すると正しい数字が出ないということはよくあります。また、輸送途上で精度が狂う可能性も全くないとは言いませんが、それなら、衝撃で梱包が大きく破損するとか、何らかの異状が伴うものです。でも、そのような形跡もありません。
少し前の例ですが、ある旋盤を10台輸入したことがありました。それぞれの機械に手書きの精度検査表が添付されていたのですが、記入されている数値が皆同じだったことがあります。全く検査せずに、数字を適当に書き入れている証拠です。
(弊社取り扱いの外国メーカーすべてがこのようにいい加減なわけではなく、中には、比較的正確に手書きの精度検査表を添付してくるところもあります。)