最近、豚肉の内臓など、牛肉以外の肉を混入した商品を牛肉100%と表示したり、消費期限をごまかしたりして販売していた会社がマスコミで大きく取り上げられました。聞くところによれば、この会社の社長は、「牛肉100%と表示した商品を低価格で、喜んで買う客の方にも問題がある」とか発言して叩かれたようです。弊社のような機械業界は、食品業界と状況が相当異なりますが、一連の報道を聞いていて、対岸の火事とはいえない面があると思いました。
残念なことに、この業界にも輸入品を国産品と偽ったり、存在しない工場を存在するようにみせかけたりする業者があるとの話を、お客様から時々聞いています。極端な例では、輸入した機械について、「ネジの1本に至るまで日本製です」と説明したり、ただの倉庫を「工作機械製造工場」と言ったりしている業者があるとの情報が寄せられています。以前に本欄で取り上げましたように、国際分業が進み、一概にどの国で製造された機械か説明しづらくなっているのは事実です。でも「ネジ1本まで国産・・・」といった極端な嘘は如何なものかと思います。しかしながら、メイド・イン・ジャパンを有難がる風潮がある限り、こういう業者はあとをたちません。
同様の問題は、機械の品質や精度についてもいえます。個人ユーザ向けの安価な機械を、トラブルフリーだとか、超精密加工が手軽に出来ると錯覚させるような説明をする業者も未だにいるようです。
件の社長の言葉を借りれば、「日本製と表示した高精度の機械を低価格で、喜んで買うお客様にも問題がある」ということになるのでしょうが、このような販売方法は、お客様を冒涜する行為であり、許されるものではありません。いずれにせよ、きちんとした機械に仕上げるのは、そんな生易しいものではないのです。
弊社も中国・台湾製をはじめ多くの輸入機械を扱っています。最近は塗装技術が向上したせいか、見栄えだけなら日本製に引けを取らない機械も出てきています。でも、一皮めくると細かい問題が山のようにあり、世界一厳しい日本のお客様の品質要求水準とはまだまだ開きがあります。それらを、自社工場で調整作業を実施し、この開きを少しでも縮めたいと日夜努力しています。地道に調整すれば、それなりに品質は上がります。それに伴ってコストも嵩み、お客様へのご提供価格もどんどん上昇します。品質とコストとのバランスをとりつつ最適の状態でご提供するのは至難の業で、毎日のように営業サイド(寿貿易)と喧々諤々意見を戦わせています。最近、中国製品の信頼が大きく揺らぐような事件をよく耳にします。弊社が取り扱う輸入品にも中国製がありますが、新しいロットが到着し、受け入れ検査をするたびに、新しい問題と遭遇します。こうした問題の一部は中国メーカにフィードバックして改善を要求しますが、多くは弊社で対応せざるを得ないのが実状です。解決策(是正処置)を検討し、検査表を改訂します。結果として、検査項目・手順が増え、コストがアップしていきます。そして今度は、アップしてしまったコストをどうやって下げるかを検討する・・・日々これの繰り返しです。
口ではいくらでもいいことが言えますが、高品質、高精度、それでいて低価格の機械なんて絶対にありえません。この日誌をお読み頂いている多くの賢明なユーザ様なら、ご理解頂けると信じておりますが、機械の世界でもうまい話はありません。牛肉偽装事件をきっかけに、このような思いを強くする今日この頃です。