私たちが札幌の工場で、輸入した機械のチェックや手直しをしているというと、しばしば聞かれるのが冒頭の質問です。至極もっともな質問で、コストの高い日本国内でいちいち手直しをするよりも、現地メーカーを指導して品質を上げられるのなら、それに越したことはありません。結論からいえば、弊社でもいろいろな形で輸入品の品質を向上させる努力はしていますが、限界があるということです。
具体的な活動としては、クレームやトラブル情報のフィードバックを通じて改善を促すことから、現地工場に乗り込んでの実地指導まで様々です。そうした活動に対する海外メーカーの反応は様々です。弊社の品質に対する要求や提案に、比較的よく耳を傾けてくれるメーカーもあれば、殆ど無視するメーカーもあります。殆ど無視するメーカーというのは、大きく2種類あるようです。ひとつは、非常にプライドが高く、品質に自信を持っているメーカーです。このようなメーカーは相当明確な「証拠」を突きつけないと、なかなか否を認めません。二つ目はあまり品質向上に関心がないメーカー。このようなメーカーとの取引は自ずと縮小していかざるを得ませんが、残念ながらやる気のないメーカーが少なからず存在します。問題は比較的耳を傾けてくれるメーカーです。弊社の意見や要望に真摯に対応してくれるのですが、実際にその後改善に結びついたかといえば、かならずしもそうではありません。以前、海外に発注した卓上旋盤の検品作業に、弊社から担当者を派遣したことがありました。現地工場にズラリと並んだ卓上旋盤を、一台一台チェックしたのですが、予想した通り精度をはじめ品質に相当なばらつきがありました。このため、現地メーカーの担当者に、どこをどう直したらよいか、細かく指導しました。チェックが終わり弊社から派遣した担当者は帰国、現地工場では、指摘事項を再調整した上で日本向けに出荷されました。ところが、日本に到着した機械を調べてみると、指摘された不具合部分が殆ど直っていなかったのです。このような事例を、弊社は度々経験しています。
一体なにが問題なのでしょうか。考えるにいくつか理由がありそうです。
(1)弊社との窓口となる担当者に改善意欲があっても、品質方針が末端の作業担当者にまで浸透していない。
(2)仮に末端まで浸透しても、その作業担当者自体が退職すると、他の作業者に引き継がれない。
(3)文化の違いから、海外メーカーの品質に対する感覚と、日本人の品質に対する感覚との間には埋めようのないギャップがある。
似たような話は、海外ビジネスの問題点を取り上げた記事や書物のなかでも、しばしば見かけます。
輸入品の品質を向上させるために、現地メーカーと協力していくことは重要であり、弊社もその努力は惜しみませんが、やはり一定の品質を保つ上で、弊社工場でのチェック・手直し作業は絶対に必要だと思っています。