先日、FM110Eというフライス盤の出荷前検査をしていた時のことです。主軸ヘッドの移動量を調節するために、角型コラム(柱)に取り付けられている上下送り用のストッパ(鋳物製)を、ロックレバーで軽く締めたところ、真二つに割れてしまいました。別に、力任せに締めたわけでもないのに、簡単に破損したのです。目視による外観チェックでは、この部分に異常は見られませんでした(もちろん、作業担当者が見落とした可能性もゼロではありませんが)。恐らく、内部や目に触れない部分に亀裂の入った部品が組み込まれていたため、ちょっと締め込んだだけで割れてしまったのではないかと想像しています。
海外で作られている機械に、不良部品が平気で組みつけられてくることは珍しいことではありません。今回は、出荷前検査の途中で、破損という形で問題が発覚したため、結果として、お客様に変な機械をお届けせずに済みました。しかし、私たちの工場でも、このような部品をすべて見つけ出すのは極めて困難です。もちろん、機種ごとに検査表を用意し、主要部分はかなり念入りに見ています。部品が悪いと動きがおかしかったり、異音を発したりするような部分なら、不良品の発見は比較的容易ですが、小さな部品まで全てをチェックするのは、技術的にもコスト的にも殆ど不可能といってよいと思います。
でも、お客様の側に立てば、不可能ではすみませんよね。最終チェックに合格して、自信をもって出荷したはずなのに、お客様から、予想もしない部品の不良を指摘されると、それから暫くは、夜も眠れないほど落ち込みます。それが一種のトラウマとなって、同じ機種の整備では、どうしても指摘された部品にばかり目が行ってしまいます。時には、検査表も改訂され、検査項目が追加されるので、以後は同じ部品を不良のまま出荷するということは殆ど防げるようになります。しかし、また新たに、別な場所で変な部品が見つかることがありますので、全く気が抜けません。

札幌工場で整備される各機種は、精度調整が重要な作業であり、多くのお客様もそれを重視されておられます。しかし私たち工場では、上記のような「見えない敵(=不良部品)」との闘いにも相当神経をすり減らしているのが実情です。