中国、台湾、韓国などアジア諸国の工業製品の品質が向上し、しかも割安であるため様々な分野で日本製品の優位性が揺らいでいるという報道を時々目にするようになりました。特に今まで日本のお家芸と言われていた家電製品などで、その傾向が顕著なようです。日本の工作機械について言えば、その品質・性能は依然世界一だと評価されていますが、中国や台湾メーカが作るマシンニングセンターなどの水準も相当高いレベルに達しているとの話をよく聞きます。でも、弊社が扱っている小型の旋盤やフライス盤に関しては、水準が上がったとはとても思えません。もちろん、一昔前に比べれば、デザインも洗練され見かけだけはよくなりましたが、よくよく見ると品質が後退している部分がたくさんあります。例えば、鉄で出来ていた部分がアルミ部品に変更されていたり、堅牢だったはずのハンドル部品が粗悪なプラスチック製に変更されたりしています。塗装も雑になり、鋳物の仕上げも汚くなっています。例えばM18Aは発売以来25年、FL350Eは15年になりますが、どうも10年以上前に作られた機械の方が、しっかりとしていて、しかも丁寧に作られているように思えます。もちろん当時の機械が完璧だったという意味ではありません。当時から様々な問題があり、弊社で手直ししては出荷していました。それでも、昔の機械のほうがよく見えるのです。何故でしょうか?
近年、アジア諸国の賃金がどんどん上昇しています。本来なら上昇分を価格に転嫁したいところですが、値上げすれば、間違いなく価格競争力が失われます。それを恐れて、品質を落とすことによって従来レベルの価格を維持しているのではないかと勘ぐってしまいます。最近の円高傾向で、機械の輸入が少しは楽になるかと思いきや、海外各社も、人件費の高騰と材料費の値上がりを理由に毎回のように5%、10%と値上げをしてくるようになりました。それなのに品質は上がるどころか悪化しています。いろいろ海外メーカーに品質について文句をいいますが、まともに改善されることは稀です。こんなことが続くと、海外メーカー品は高くて悪い製品になってしまうのではないかと危惧しています。
札幌工場で毎日輸入機械に接していると、品質が少しづつ悪化しているのを肌で感じます。悪化すれば、工場での整備コストは確実に上がります。今まで予想もしなかった部分での不具合をお客様より指摘されることもあります。新たに“発見”した不具合部分は、都度検査表に反映させ、再発防止に努めていますが、品質悪化に伴う追加作業項目は増加の一途です。2006年に使っていたFL350Eの検査表は改訂第14版でしたが、4年後の今は28版です。この4年で14回も検査表を改訂したということです。全くモグラ叩きのようで、輸入機械の品質悪化に日々振り回されています。