お客様から、加工に関する相談を受けることがよくあります。図面やサンプル品を見せられ、これと同じものをミニ旋盤やミニフライス盤を使って作ることができないかという質問です。中には、具体的に1日XX個作りたいという条件まで提示されることがあります。工場では、図面を見せられれば、ある程度可否は判断できます。でも「作れます」と回答する時に“ただし書き”が必要になることがしばしばあります。というのは、機械の導入を検討されているお客様の中に、旋盤やフライス盤があれば、半ば自動的に物が出来上がると錯覚している方が時々おられるからです。このようなお客様には、
「この機械があれば作れるとは思いますが、加工技術が伴わないと困難です・・」、
「このような加工精度を出すには創意工夫が必要です。機械の良し悪しよりも腕の良し悪しが問題になります」などという否定的な回答になりがちです。
加えて、複雑な形状や特殊な素材を相手にするなら、治具も必要になります。
「治具は市販されているわけではなく、加工内容に合わせて自分の頭で考えて作るものですよ。」
実際に、最適な治具を作るには様々な知恵が必要になります。腕がよい職人はよい治具を自分で作れる人です。
ならば、NC付きの機械なら腕や知恵がなくてもよいのかと聞かれることもあります。答えはノーです。NC機は、プログラム通りに加工しますが、削られた部品が思惑通りに仕上がっているとは限りません。加工中にワークが変形したり、熱により歪んだりすることがありますし、切削中に刃物が摩耗して切り込み量が変わったりします。こうした様々な要素を勘案しないと、いい工作は出来ません。そのようなことは、NCの付いていない機械加工での経験を通じて培われるものです。結局、普通の旋盤やフライス盤できちんとした加工ができないと、NC機を使いこなすことは困難だということです。

先日お客様より、ある部品の加工がミニ旋盤で可能かどうか検証したい、ついては札幌工場で試しに削って欲しいとの依頼を受けました。工場で担当者が、ミニ旋盤と標準的なバイトを使って、実際に削ってみました。本当にきれいに仕上がりましたので、お客様に対し、このような加工なら、弊社のミニ旋盤でもきれいに加工できますよと回答しました。
しかしながら、結局、そのお客様はミニ旋盤の購入を断念しました。理由を伺ってみると、
「確かにきれいに仕上がっているが、札幌工場の職人が作業したから可能なのであって、自分には同じ作業は出来ない。素人の自分でもきれいに加工できなければ、機械を導入しても意味がない」とのことでした。話をお聞きして、非常に残念な気持ちになりました。

旋盤やフライス盤による加工は、ピアノやバイオリンなどの演奏に似ていると思っています。最初からうまく弾ける人はいません。車の運転だって、教習所に入所したばかりの時は、皆おっかなびっくりだったはずです。機械加工も最初からうまくできる訳はありません。最初からよい治具を作ることが出来る人もいません。失敗や試行錯誤を繰り返しているうちに、技量が上がり、勘所もつかめるようになり、よい工作ができるようになるのです。悩むことを大いに楽しみつつ腕を磨き、機械加工をエンジョイして頂きたいものです。


札幌工場でも治具は欠かせません