最近、海外から輸入した小型フライス盤に大規模な不適合が見つかりました。入荷した機械の4割の主軸(スピンドル)が不良という惨憺たる状況であり、一瞬、頭の中が真っ白になってしまいました。今回の不良は、いわゆる“調整”で直せるレベルではなく、主軸を交換しない限り解決不可能なほど深刻なものでした。何しろ、主軸の振れが0.2mmとか0.5mmなどという信じられない数値なのです。一般的な基準としては、主軸の振れは、甘くみても0.02mm以内です。まさに桁違いの悪さということです。気を取り直して、このフライス盤のメーカーに苦情を出し、正しい主軸の供給を要求したところ、驚くべき回答が返ってきました。曰く、「主軸の精度が悪いなんて考えられない。原因は、お前(札幌工場)の測定方法が、我々のやり方と違っているせいだろう。我々の工場では、我々のやり方で主軸の検査を3回も実施し、合格品のみを出荷している。」とのこと。ご丁寧に、その工場での精度検査シーンを撮影した写真まで添付されてきました。その検査方法というのは、極めて奇妙なもので、主軸にドリルチャックアーバーのようなものを取り付けて、その先端を測っているのです。私たちが行っているJIS規格に基づく検査方法とはかけ離れたものでした。こんな方法で正しく精度を測定できるのかね・・と思いつつも、「だったら、そのやり方での測定結果を見せて欲しい」と迫ると、「データは保管していない。」との返事。全く取り付く島がありません。このままでは、ウヤムヤにされて、不良品を掴まされたまま泣き寝入りしかねません。正直、困ったなと思いましたが、よくよく機械の梱包をみると、なんと英文の精度検査表が貼り付けてあるではありませんか!検査表を箱から引き剥がし、内容を確認したところ、そこに書かれていたのは、JIS規格に倣ったオーソドックスな検査方法でした。どの検査表も、測定した数値が手書きされており、機械番号、検査日、検査責任者のサインまで入った本格的なものでした。でも、書き込まれている数値は、恐れていた通り、私たちが全く同じ方法で検査をした結果とは大きくかけ離れたものでした。 記入されている数字があまりにも良すぎるのです。1台目の検査表には、主軸の振れが0.008mmと記入されていました。 このクラスのフライス盤としては素晴らしい数値です。それが、私たちの検査では0.2mmです。2台目の検査表にも0.008mm、それに対して、私たちの数値は0.3mm。3台目の検査表にも0.008mm・・・「あれ?何かへんだぞ。どの検査表も、全部数字が0.008mmだ!?」ほかの項目も含めて、すべての検査表を見比べたところ、書かれている数字は殆どすべて同じだということがわかりました。

結局、「検査のやり方が違っている」という言い訳は真っ赤な嘘で、検査方法自体は、私たちが実施している方法と殆ど同じでした。「検査を3回している」というのも嘘です。全く検査もしないで、でたらめな数値を記入して出荷したというのが真相でしょう。この一連の事実に、空いた口が塞がりません。

向こうの検査表の数値とこちらの測定結果を、件の海外メーカーに突き付けたところ、観念したのか、どうやら渋々こちらの要求に応じてくれそうな気配です。でも、きちんとした主軸が手元の届くまでは安心できません。