札幌工場のかつての主力製品は小型形削盤(セーパー)ですが、それ以外に、キーシーターなども製造し、海外へも輸出していたようです。工作機械以外でも、様々な装置の製造を手掛けていたとの記録が残っています。
例えば、鉄道会社に納入された「転車台空気駆動装置」なるものも、その一つです。

転車台は、ターンテーブルともいい、SL(蒸気機関車)などの向きを変えるための装置です。SLには、運転台が進行方向にしかないため、バックでの運転は不向きです。このため、SL全盛時代には、終着駅や大きな駅などには転車台が必ずあって、SLが進行方向を向いて運転できるように、機関車の向きを変えていました。
しかしながら、SLが姿を消し、方向転換の必要がないディーゼル機関車や電気機関車が主流になると、転車台も不要となり撤去されていきました。
いまでも現役の転車台は、SLを観光列車として走らせている路線などに、わずかに残っているのみです。

転車台の駆動方式には、手動式、電動式がありますが、札幌工場で製造していたのは圧縮空気式の装置でした。すなわち、転車台に載せられ、方向転換されるSL自体のブレーキ用圧縮空気を利用して、転車台を回転させるものです。

手元にある1958年(昭和33年)5月30日の新聞の切り抜きによれば、美唄(びばい)鉄道に転車台空気駆動装置を納入したとのこと。それ加えて、旧国鉄の旭川鉄道局にも10台位納入したとの記述があります。

札幌工場には、当時を知る関係者はもちろん、この装置に関する資料も部品も残っていないので、今となっては詳細を知る術はありません。ただ、ボロボロの新聞の切り抜きが残るのみです。美唄鉄道は、美唄炭鉱の石炭輸送のために建設された鉄道なので、炭鉱の閉山により、この鉄道も1972年(昭和47年)に廃止されてしまいました。

最近、たまたま立ち寄った書店に並んでいた鉄道関係の写真集(*)に、美唄鉄道の“蒸気式ターンテーブルで方向転換(昭和37年8月)”という説明文付きの写真が掲載されているのを、偶然見つけました。写真には、装置自体は写っていませんでしたが、転車台に載せられたSLに、転車台の下の方から延びるホースをつないで、回転させているシーンが写っていたのです。
それを見た時、転車台の下部には札幌工場で製造した転車台空気駆動装置が設置されているに違いないと感じました。“蒸気式”というのはおそらく“圧縮空気式”の間違いではないかと思います。いずれにしても、鉄道の写真集に、札幌工場で製造していた装置の“痕跡”をみたときは、感慨もひとしおでした。

札幌工場では、他にも、北海道ならではの装置を製造していたようで、それについては次回、ご紹介します。

*『よみがえる北海道の鉄道・軌道 昭和20~50年代 C62から炭鉱鉄道までの完全記録』浅原信彦、高井薫平著 株式会社学研マーケティング 2012年9月11日発行、p.112.

 
古いスクラップブックに貼られた当時の新聞記事