5月の終わりに、鉄道関係の方から「転車台空気駆動装置」の修理に関するご相談がありました。

「転車台空気駆動装置」とは、鉄道車両の向きを変える設備であるターンテーブル(転車台)を、圧縮空気を利用して回転させる装置です。
札幌工場では1958年(昭和33年)に、この装置を製造したことがあり、当時の新聞記事も残っています。

その新聞記事を題材にして「転車台空気駆動装置」を、6年前の札幌工場作業日誌で取り上げたことがありました(※)。
相談者は、たまたまその日誌をお読みになって連絡をしてこられたとのことでした。

そんな古い装置に関するご相談に、一瞬耳を疑いました。
何しろ65年前のものです。装置の現物が残っているということ自体が信じられませんでした。
件の「転車台空気駆動装置」は現役で使用されているものではなく、道内で保管されていたものだそうです。
これを動くように整備して活用したいとのお話でした。

少し興味をそそられたのですが、あまりにも古すぎて、当時のことを知る社員もいなければ、図面などの資料も全く残っていません。
いま札幌工場で手掛けている仕事と大分勝手が違うようにも感じました。
何よりも、現物をみたことがなく、どのように動くものなのかも全く想像がつきませんでした。
遺憾ながら、修理をお断りするしかありませんでした。
全くお役に立てず申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

今回のご相談を通じて、この装置について新たな情報がもたらされました。
設計者は国鉄の人で、道内の複数の会社で製造されたこと。
何よりも驚いたのは、小樽市総合博物館にあるターンテーブルでは、いまでも転車台空気駆動装置が使用されているという事実でした。

小樽の装置が、札幌工場製なのか他社製なのかは、現時点で確認のしようがありません。
銘板でもあれば別ですが、目視では銘板の有無を確認することはできません。

実際に装置が動いているところを、今回動画で初めて見ました。
ターンテーブルの下部に駆動装置が取り付けられており、装置から前方に突き出たピストンの先端にクリップのお化けのようなものが付いています。
それを使って転車台のレールをわし掴みにして、そのままピストンを空気圧で装置側に引っ込めると、クリップ自体は動かず、逆に転車台は引っ張られて前進するのが分かります。
(言葉では、あまり的確な表現ができませんので、動画をご覧下さい。)

社員一同、感心して見入ってしまいました。

鉄道関係者の間ではこの装置を、親しみを込めて「尺取り虫」と呼んでいるそうです。

これを機に、もう少しこの装置のことを調べてみようと思います。

※札幌工場作業日誌「転車台空気駆動装置」2017.8.21