「夕張で見たポンプは、俺が昔作ったものじゃないか?」

20年ほど前のある日、勤続年数が50年を超えるベテラン職人がつぶやいた一言が、まだ耳に残っています。

夕張といえば、今はメロンが有名ですが、かつては日本有数の炭鉱地帯として栄えた町です。しかし、1960年代以降、日本政府のエネルギー政策が、石炭から石油中心に大きく転換したことに加え、ガス爆発事故が多発したこともあり、夕張の炭鉱は全て閉山に追い込まれてしまいました。
今は、炭鉱の跡地に建てられた「石炭博物館」で往時をしのぶしかありません。

石炭博物館には、炭鉱内で実際に使われていた設備がずらりと展示されています。たまたま現地を訪れたこの職人が、館内で見かけた展示品のひとつである坑内用排水ポンプが、札幌工場製ではないかというのです。

詳細は不明ですが、1950年代に札幌工場で、夕張炭鉱向けに坑内用排水ポンプを製造していたことがあります。実際に製作に携わったのが若き日のこの職人でした。工場には、当時製作していたポンプの写真が、たった1枚だけ残っています。

坑内では、多くのポンプが使われていたはずですから、実際に展示されていたポンプが本当に札幌工場製なのか、確認はとれていません。製作を担当した職人の記憶違いという可能性もあります。しかし、件のベテラン職人も鬼籍に入って久しく、唯一の手掛かりは、残された1枚の写真だけです。

2017年夏、真偽のほどを確かめようと、ポンプの写真を持って夕張に足を運びました。
しかし、生憎、石炭博物館は改修工事中で見学できませんでした。唯一見学できたのは併設されている模擬坑道のみです。模擬坑道内にも、様々な炭鉱設備が展示されていましたので、丹念にみて回りましたが、残念ながらそれらしきものはありませんでした。

果たして、半世紀以上前に製作した札幌工場製のポンプに会えるかどうかは、博物館が再開するまでお預けとなりました。

夕張炭鉱に納めたポンプ