デジタル目盛といって、表示画面に送り量を表示させるユニットがあります。ミニ旋盤に取り付けて使用するものですが、デジタルスケールに比べて安価で便利なツールです。
私たちは、この製品を、いままで10年以上にわたり手掛けてきました。ユニットを独自に改良したり、機械への組み込み方法に工夫を加えたりするなどの努力の甲斐があって、製品の品質も安定しつつありました。

ところが、ある日突然、海外の製造元より、デジタル目盛を、全面的にモデルチェンジした新ユニットに切り替えるとの通告がありました。それ自体はともかく、私たちが長年にわたり扱ってきた、従来タイプのユニットの供給を同時に終了すると言われたのには参りました。さらに、驚いたのは、従来ユニットと新ユニットとの間には、全く互換性がないという、とんでもないオマケまでついていたことです。

仕方なく、新ユニットのサンプルを何個か取り寄せ、工場で「品評会」を開催しました。見かけはいいのですが、新ユニットは、従来品に比べて、華奢だという印象が否めませんでした。それよりも問題なのは、機械に取り付ける前から、画面に数字が表示されなかったり、数字がチラついたりしていたのです。

結論から言えば、新ユニットの採用は断念しました。新ユニットは、形だけは洗練されているのですが、動作が安定しない上、オイルやキリコに弱いことがわかりました。これらの問題点を、具体的に列挙して、仕入先に改良を依頼しましたが、事実上、拒否されてしまいました。
札幌工場の作業担当者たちも、異口同音に「出荷すれば間違いなくトラブルが起きるので、絶対に売りたくない」と言い出す始末です。

これに代わるものとして、高額ながら品質が確かなデジタル目盛のユニットを新たに採用し、販売を開始しました。価格が価格なので、今までのようには売れないかもしれません。かといって品質が不安定な製品を採用するわけにはいきません。営業的に不利な場面もあるかも知れませんが、ここは譲れない一線です。