寿貿易はかつて、アマチュア用工作機械の世界的メーカだったオーストリアのエムコ社の日本総代理店でした。アマチュア用の工作機械というのは、寿貿易がエムコ社の製品を紹介するまで、日本には存在しませんでした。そういう意味で、エムコ社の小型工作機械が、日本のホビーユーザーに与えたインパクトは計り知れないものがあります。寿貿易は、日本総代理店だった約20年間にエムコ社製品を数万台販売しました。 販売台数が多かったため、今でも、ちょっとした修理やスペアパーツの注文が舞い込みます。しかしながら、販売後20年以上経過しているものが大半である上、当のエムコ社自体がこの種の機械ビジネスから撤退しているため、これらの注文に100%応えられる状況にはありません。それでも、可能な限りの対応はさせて頂いているという自負はあります。現に、一部の部品をいまでも在庫し、いつでも出荷できる態勢を整えております。20-30年も前に販売した機械のフォローをここまでやっている会社は、日本では極めて珍しいのではないかと、我ながら感心しています。
先日もあるお客様(学校)より、20年以上前に販売したエムコ社製の旋盤、マキシマット・スーパー11の修理依頼が入りました。マキシマット・スーパー11というのは、現在のUSL6AやL260に匹敵する機械です。依頼を受けて、まず現地で機械の状況をチェックしました。現物をよく見てみると、一部の重要部品が欠落しており、これらの部品はどれも新規調達が不可能なものばかりでした。このため、「完全修復ではなく、とりあえず旋盤として使用できる状態に復元する」という条件で修理を請け負うことにしました。このような修理は、現地ではとても無理ですので、札幌工場に運びこむことになりました。こうして20年前の古びた旋盤が札幌工場にやって来たのです。
工場の現在の技術者たちは、この旋盤を見るのはこれが初めてです。それでも旋盤ですから、みれば大体の見当はつきます。長年の経験と勘を頼りに、修復作業に取り掛かりました。 今回ラッキーだったのは、作業前に倉庫で古い部品を探したところ、この機種用の純正部品や類似機種の古い部品がいくつか見つかったことです。これらを、手直ししつつ、また、簡単な部品は新たに作り、組み付けていくうちに何と完全に修復できてしまいました。依頼されたお客様のご予算も限られていますので、再塗装などはしませんでしたが、各部の送りの動きを調整した上で、きれいに掃除したら、20年前と全く同じように動く旋盤に甦ったのです。
修理を依頼される古い機械がこのようにすべてうまくいくことはまれです。今回は非常にうまくいったので、皆で祝杯を挙げました。


修理前
旋盤の後部に取り付けられているミーリングアタッチメントは今回の修理対象外です。


修理後